はじめに

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、2026年12月1日に掛金上限と加入対象が変わる予定です。会社員や公務員などの第2号加入者は、企業年金の有無によって分かれていた上限が見直されます。自営業者などの第1号加入者は、国民年金基金などとの共通上限が月額6万8,000円から7万5,000円へ引き上げられます。

もう一つの大きな変更は、一定の条件を満たす60歳以上70歳未満の人が、新たにiDeCoへ加入または拠出を継続できるようになることです。ただし、「70歳未満なら誰でも加入できる」という変更ではありません。

この記事では、厚生労働省が2026年9月21日時点で公表している資料を基に、現行制度と改正後の数字、加入条件、家計で確認したい点を整理します。

2026年12月1日に予定される変更

事実:厚生労働省は、iDeCo、企業型DC、国民年金基金の拠出限度額引上げと、iDeCoの加入可能年齢の拡大を2026年12月1日に施行予定としています。主な月額上限は次のとおりです。日付は日本時間です。

加入区分 2026年11月まで 2026年12月以降の予定 確認点
第1号・第4号加入者 iDeCoと国民年金基金等で合計6万8,000円 合計7万5,000円 自営業者、フリーランス、国民年金の任意加入者など
第2号加入者・企業年金なし iDeCo月額2万3,000円 iDeCo・iDeCo+で月額6万2,000円 会社の企業年金制度の有無を確認
第2号加入者・企業年金あり iDeCoは最大2万円、企業年金等との合計は月額5万5,000円以内 iDeCoと企業年金等で合計6万2,000円 6万2,000円すべてをiDeCoへ拠出できるとは限らない
第3号加入者 iDeCo月額2万3,000円 月額2万3,000円 扶養されている配偶者などは上限据え置き
新しい第5号加入者 対象区分なし iDeCoと企業年金等で合計6万2,000円 一定の条件を満たす60歳以上70歳未満。企業年金等があればその分を差し引く

見方:上限が大きく増えるのは、企業年金がない会社員などです。月額2万3,000円から6万2,000円へ変わると、新上限を12か月適用した年換算では27万6,000円から74万4,000円になります。一方、自営業者などの共通上限は、同じ年換算で81万6,000円から90万円への引上げです。2026年分の上限額を示すものではありません。

これは拠出できる最大額の変更であり、その金額まで積み立てる義務ではありません。上限の増加分をそのまま家計の余裕と考えず、毎月の収支や生活防衛資金と照らして掛金を決めます。

会社員の6万2,000円は「企業年金との合計」

事実:企業年金がある第2号加入者は、2026年12月以降、iDeCoと企業年金等を合わせて月額6万2,000円が上限になります。企業型DCの事業主掛金や、確定給付企業年金(DB)などの他制度掛金相当額がある場合、その分を共通上限から差し引いてiDeCoの拠出可能額を考えます。

企業年金がない第2号加入者は、iDeCo・iDeCo+の上限が月額6万2,000円へ引き上げられる予定です。勤務先の制度によって、同じ会社員でも自分で拠出できる上限は異なります。

見方:「会社員のiDeCo上限が一律6万2,000円になる」と理解すると、企業年金がある人は実際の上限を取り違えます。まず勤務先の人事・福利厚生資料や企業型DCの加入者サイトで、事業主掛金と他制度掛金相当額を確認することが出発点です。

60歳以上70歳未満の加入には条件がある

事実:改正では、国民年金被保険者ではない60歳以上70歳未満の人を対象とする「第5号加入者」が新設される予定です。厚生労働省は、次のいずれかに該当する人を基本的な対象として示しています。

  1. iDeCo加入者
  2. iDeCoの運用指図者
  3. 企業年金からiDeCoへ資産を移換する人

これに加え、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給しておらず、企業型DCのマッチング拠出を実施していないことが条件です。老齢基礎年金を繰り下げ、老齢厚生年金を受給している人は加入できる場合があります。

施行日から3年間は経過措置があり、上記三つに該当しない60歳以上70歳未満の人も加入できるとされています。一方、施行日までに老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給した場合は加入できません。

見方:変更されるのは掛金を拠出できる年齢と対象です。受取開始の時期や、原則として60歳まで資産を引き出せないというiDeCoの性格とは分けて考える必要があります。60代で加入を考える場合は、加入資格だけでなく、受給開始までの期間と資金を使う予定も確認します。

上限引上げで変わらない三つの注意点

1. 掛金を増やすと手元資金は減る

事実:iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象です。ただし、掛金として拠出した資金は、原則として60歳まで引き出せません。

見方:税負担の軽減だけを見て掛金を増やすと、病気、失業、住宅修繕などに使える現金が不足することがあります。まず当面の生活費と緊急予備資金を確保し、その後に長期間使わない資金の範囲で考えます。

2. 税負担の軽減額は人によって異なる

掛金の所得控除による効果は、課税所得や所得税率、住民税の状況で変わります。扶養内で働く人など、もともとの所得税負担が小さい場合は、同じ掛金でも税負担の軽減額が小さくなることがあります。

3. 上限拡大と運用成果は別の話

iDeCoでは、預金、保険、投資信託などから運用商品を選び、最終的な受取額は拠出額と運用結果で決まります。上限が増えても、元本確保型以外の商品では価格変動があり、運用益は保証されません。手数料、商品の費用、受取時の課税関係も確認が必要です。

公的年金は老後生活の土台であり、iDeCoはその上に積み上げる私的年金です。公的年金と物価の関係は年金額は物価上昇でどう変わる?で、いつでも売却できる資産形成制度との違いは新NISAの仕組みで整理しています。

改正前に確認したい5項目

  1. 勤務先に企業型DCや確定給付企業年金があるか
  2. 事業主掛金や他制度掛金相当額はいくらか
  3. 現在のiDeCo掛金と、12月以降に無理なく拠出できる額はいくらか
  4. 60歳以上の場合、年金やiDeCo給付金の受給状況が加入条件を満たすか
  5. 金融機関で必要となる変更手続きと受付時期はいつか

上限引上げに合わせて掛金を変更する場合でも、適用月や手続き期限は利用する金融機関によって確認が必要です。制度の施行前に、勤務先とiDeCoの運営管理機関から届く案内を確認してください。

まとめ

2026年12月1日に予定されるiDeCo改正では、第2号加入者の共通上限が月額6万2,000円、第1号加入者と国民年金基金等の共通上限が月額7万5,000円へ引き上げられます。企業年金がある会社員は、企業年金等との合計で6万2,000円であり、全額をiDeCoへ拠出できるとは限りません。

また、一定の条件を満たす60歳以上70歳未満も新たな加入対象になります。上限や対象年齢だけで判断せず、勤務先の制度、受給状況、生活防衛資金、資金を使う時期を確認してから、自分の家計に合う掛金を考えることが大切です。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定銘柄や金融商品の売買を推奨するものではありません。掲載の数値は執筆時点で確認したものです。投資判断は、ご自身の状況やリスク許容度を踏まえ、必要に応じて専門家にも相談しながらご自身の責任で行ってください。詳しくは免責事項もご確認ください。